夏祭りの金魚から

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GR DIGITAL



あれだけ駄目と言ったのに、またやってきてしまった。


赤いランドセルの横、100円ショップで買ったというプラスチックの金魚鉢に、
おばあちゃんが入れてくれた綺麗な小石が数個。
1ぴきの金魚がその中で口をパクパクしている。
すでにエサを与えたらしく、メダカのエサと書かれた空箱もころがっている。


「どうするんだよ、
水換えもしなきゃいけないし、
エサもあげなきゃいけない。
それに、お祭りの金魚は病気を持っていて、
すぐに死んでしまうんだよ」


一握りしか入ってない水はどうみても傷んでいた。
フンの漂う水底で動く1ぴきの金魚が哀れに見えた。


「返してくればよかったのに。
これからちゃんと、面倒見れるの?」


心配そうに金魚をみつめる女の子を何度も責めた。
仕方がないので、黄色のバケツに水草水槽の飼育水を入れて、
小石と金魚をそっと移してあげた。
水の量が増えたせいか、気持ちよさそうに金魚は泳いでいる。


「これで、一週間生きているか .....
一週間だからね」


女の子は、お祭りの金魚に、チョロという名前を付けた。
誰が見ても忘れないようにと、紙に名前を書いて、バケツのすぐ上に貼った。


「なんで、チョロなの?」

「チョロチョロ動き回っているじゃん?」

「じゃあ、おまえと一緒だ」


どこかに仕舞い込んであったエアポンプをさがして、金魚が迷惑しそうなくらいの
たくさんのエアレーションをかけてあげた。




たぶん、すぐに死んでしまうだろう。
アクアリウムのきっかけだった、以前の金魚もそうだった。
それまでは、何とかしてやろう。

バケツをのぞくと、エアレーションのアワと一緒に泳いでいる赤い魚影。


「チョロ、がんばってね、
1週間だって、
がんばるんだよ」

僕の横で、心配そうに声をかけている。


「一週間生きていたらさ ...
新しい水槽に入れてあげようか」





金魚の水換えは、水草水槽の飼育水を使って、毎日行った。
セラのアクタンを必ず入れて、飛び出さないように、新聞紙でバケツをふさいで。


そして、1週間がすぎた。
金魚は、相変わらず、バケツの中で元気に泳いでいる。
ちょっと、複雑な気分だった。

約束を少し後悔しながら、物置の中から埃をかぶっていた30cmキューブを取り出し、
綺麗に磨いて、水草水槽の飼育水を入れた。黄色のバケツで3杯も入った。
うちに来てから、2回目の引っ越しだ。


夜になってもよく見えるように、使ってなかった照明も、付けてあげた。
ホームセンターでエアーチューブにつなぐ水中フィルターも初めて買った。
久しぶりにガラス蓋もして、僕としては、最大限におごったつもりだった。




「ほら、今度は、ちゃんと横から見えるよ」


金魚は、体をくねらせて、上に行ったり下に来たり、せわしなく動き回っている。
愛嬌のある動作で、見ていてこちらも、楽しくなった。
けど、これが、エサキンと呼ばれていることなど ....


しかし、水槽にいれて見ると、
今まで気がつかなかった金魚の左腹に何やら傷みたいな白い点があった。
尾びれにも白い点がある。


「やっぱ、病気かな。こっちは綺麗なのに、
ここに白い点があるでしょ、尾っぽにも ...」

金魚は、右に行ったり、左に行ったり、落ちつかないようすだった。


「毎日よく観察して、
何かあったらすぐに教えるんだよ。
病気が治ったら、砂を入れてあげるからね」




しばらくすると、白い点も消えて、約束どおり、金魚水槽にアクアグラベルがはいった。
金魚藻もいれて、ライトに照らされたガラスの水槽に、元気に泳ぐチョロの姿があった。


やがて、夏休みも7月が過ぎ、だんだんと狭い水槽周りが汚くなってきた。
水換えもガラス蓋のせいで、億劫になり、ガラスのコケもいやになってくる。




「こんど、こっちの水槽に入れてあげようか?
広くて、もっと、ちょろちょろするよ」






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by another-style | 2008-08-11 23:43 | box ... ADAのこと
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